簡易ひずみ率測定


秋葉で安売りしていた外付FireWire接続のオーディオインターフェイスをA/Dコンバーターとして使ってひずみ率を測定してみました。ソフトはフリーで提供されているものですがかなりのスグレものではないかと思います。

信号源はオーディオアナライザーの発信器ですが、オーディオアナライザーで測定したときのひずみ率THD+NはFFTで計算したTHDの指示値よりは小さく内蔵アンプやA/D変換に伴うひずみの発生が無視できないようです。

本来であればTIなどの優秀なA/Dコンバーターを使いたいところですが192KSの出力は110ΩAESダブルスピードに限られるのでそれを受けられるのはRMEの高級機になるそうです。RMEを買うなら測定器自体が買えてしまうので192KSを使いたいときはインターフェイスの内蔵A/D変換を使うことします。ただし96KSでよいならTIの高性能A/D変換を使ってS/PDIFで受けることができます。

このFireWireインターフェイスはケースががっしり重く据置するには良いです。ローランドの一番安い赤ボックスより安いしパネルも使いやすくそういう面では悪くはないです。96KHzのノイズフロアが-100dbくらいにあるのも悪くない証拠でしょう。全帯域のノイズとしてはRMSで-85〜-90dbがやっとでしょうが...

ごらんのように10KHzくらいまでなら2nd, 3rdを-100db付近まで測定できるのでひずみ成分の傾向を見る場合や単一の高調波成分をおおまかに測定する分には実用になるレベルとは云えそうです。THDやとくにTHD+Nは精度は期待できないでしょう。演算精度が悪いのではなくA/D変換によるノイズが付加され、前述のようにどうがんばってもRMSで-85〜-90dbにしかならないためです。

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その後、さらに低ひずみ率発信器の信号を同様に本機に入力してみましたが、スペクトルは前回測定結果とまったく同じになることがわかりました。やはり本機自身のひずみ率を測定していたことに等しいようです。
ACアダプタがSW電源方式だったので鉛コロイドバッテリー(端子電圧 12.8V)を使ってみましたがノイズひずみとも明らかな影響がないと言って過言ではないと思います。サンプリング周波数を96Kに落としてみてもひずみ率には変化がないためおそらくは主にオペアンプのせいでしょう。10KHzの2ndの測定限界は約-100db付近で3rdは約-90db付近のようです。
OP-AMPを交換すればもう少しいけるかもしれませんがフラットパッケージだととっかえひっかえできないので嫌になりますね。
面倒でしたが開けてみるとラインアンプはやはりフラットの5532でA/DはAK4620Bでした。交換できなくはないですが...10dbとか20db良くなるとも思えないのでPendingと致しましょう。

機会があればTIの最新のA/Dボード(専用のDC直結差動入力アンプが使われている)を試してみたいです。
リアルタイムで見るのは不可ですがTASCAMのデジタルレコーダーで一旦WAVに記録すれば192KSを試すことはできます。

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こちらはAgilent33250Aの10KHz正弦波を測定したときのFFTです。ひずみ率計ではTHD+N = 0.0176%ですからFFTで計算したTHDは2倍以上の値になってしまっています。規格では1MHz以下の場合は-60dbとなっていましたので十分満足する値ではないかと思います。

12bitDDSの33250Aのひずみ率は14bitDDSの33220Aより悪そうだから使いたくないと云った某電機通信系大卒の師匠?のために測定したのですが、33220Aだろうか33250AだろうがDDS方式は信号純度が悪いようでひずみを問題にする測定には不向きではないかと思った次第でございます。こんなスペクトルじゃ測定対象(DUT)のひずみがわかりづらいったらありゃしないですね。