自作WORD CLOCKの可能性


優秀なジッター特性をもつと思われる個体

このルビジウム発振器は11.2896MHz用に調整されたもので、DDS方式であるにもかかわらずジッターの少ない個体です。VCXOを2分周して出してくるルビジウムと同等以上の性能に驚いています。もちろん、単に周波数の設定を変えただけではなく出力フィルタにも手が加えられていることも間違いないでしょう。

ルビジウムは大まかに2系統があって、周波数がハード的に(10MHz)固定されたもの(EFRATOM/DATUM)で、もう一方は(10MHzより十分に高い周波数の原発を用いた)DDSで周波数の可変を実現したもの(FE)です。一般的にスペクトル純度やジッターの点からは周波数固定式が有利だと思います。オシロで波形を観察するとDDS方式は明らかにノイズが多いことがわかってしまう程ですが、スペクトル純度と位相雑音(ジッター)はパラレルではないというところがDDS方式の存在価値を支える重要なポイントなのでしょう。

オーディオ的な周波数可変のルビジウムの利点とは、以前にも力説していますが、マスタークロックを分周で作り出せることで、クロックジェネレーター(PLL方式あるいはDDS方式)の介在を不要とし数十万円の節約をもたらすことであろうと思っています。クロックを分周する程度であれば、恐らくはPLL/DDSと同等以上の品位でマスタークロックを発生させることが可能であるはずです。参考文献(資料)等によると、簡単に手に入る74ACシリーズの位相雑音は非常に小さいことがわかっています。

マスタークロックの発生装置なるものを購入している皆様には大変申し訳ありませんが、素人オーディオ的には、そのような装置を購入するのはもったいないと思っており、これまで1度も購入したことはないのでございます。ただし、その代わり最高級のクロック発生装置の価格を遙かに越える額の測定器を購入する羽目にはなっており、結果として投資額が意味不明に増大していることには違はないかもしれませんが(苦笑)。

余談でしたが、これまでDDS方式のルビジウムはジッタが多く不利になると思っていましたが、実際にはそのようなことはなさそうであることが理解できました。出来の良い?固体であれば固定周波数モノと同等以上であると云えそうです。

ただし、DDSで直に周波数を設定して出力するやりかたと、分周して出すやりかたのどちらが良いかを検証する必要はありそうです。オーディオ機器で受けるマスタークロックは通常TTLレベル(矩形波)であるはずなので、TTLレベル変換はどちらにせよ必要ですが。

DDS周波数固定 ---> 分周の利点
マスタークロックの周波数が固定されているためDDSの周波数のズレを微調整で吸収できる
出力フィルタにより不要帯域がカットされている
同時に複数の周波数を出力することができる

DDS周波数可変 ---> ダイレクト出力の利点
単一の周波数でよければDDSの周波数のズレを微調整で吸収できる
出力フィルタにより不要帯域がカットされていないため別途フィルタが必要
同時に複数の周波数を出力することはできない

果たしてどちらの結果が良いか...ですね。TTL変換するところまでは回路は同じで違いは分周するかしないかの違いだけですが、後者の場合、44.1KHzなどとという周期の長い正弦波を受けると(スロープが異様に緩やかなので)ジッタが増大する可能性がありそうです。

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DDS周波数固定 ---> 分周方式

以前実験したしょぼい分周回路

測定器を購入した分、高級なクロック発生装置分の元を取るべく、しょぼい分周回路で高級機に挑戦したわけですが、ルビジウムと同じ条件で53132AでSDを取ってみると0.24μHzと算出されており、なかなかすばらしい(のかどうかわかりませんが)値が実現できているようです。
ちなみに1/256に分周しているのでジッターも1/256になっているはずです。0.24を256倍すると61.44ですがこれが元のルビジウムのSDにほぼ等しいので、分周したことでジッターが明らかに増えているということはないようです。

なんたってトヨデントランスにしょぼい電源ICとたった4個のDIP ICですから、このようなものがオーディオに使えるのかとお叱りを受けそうですが、すくなとも動作には問題なかったことをお申し添え致します。

スピーカーなどの物量はお金をかけないとどうしようもありませんが、クロックなどはお金をかけなくても何とかなる代物と結論づけたいところです。

ジッターで音が変わるとするならしょぼくとも特性が良ければ問題ないということになるでしょう。高いトロイダルトランスやアナログ的に高級なキャパシタなどは使わなくても良いですよね。そういう部品は個人的には大好きでたくさんストックもありますけれど。