GPSレシーバーとルビジウム発振器


調整用のホールが開けられてないインタクトなDATUMですが、精度はどれくらいある?

数年前でしょうか(その頃素人オーディオとは縁もゆかりもなかった出来事ですが)アメリカの携帯電話基地局の設備の入れ替えにて、かの有名なGPSレシーバーZ3801Aが大量に放出されたらしく、日本にもそれが流れ込んできて話題になったようです。今でもアメリカの田舎のディーラーが「動作中のものを引っこ抜いてきた」ということで売っていることもありますが(そのティーラーはUS国内にしか出荷しないと云ってました)その多くは個人売買で限られた数が流通しているのみでしょう。
GPSの世界ではポピュラーと云えるのは3機種くらいしかありません。Z3801A(58503A)/Z3805A/Z3816Aですが、状態を監視するGPS CONというソフトウエアの影響も非常に大きいと思います。GPSを買ったのにこのソフトを使わないい手はないでしょうし、公式に対応しているのがHPのこの数機種に限られるからです。
海外からはどの機種もうまくすれば取り寄せ可能ですがZ3805Aについてはあまり意味がないと個人的には思います。Z3801Aのオーブンを使ったZ3805Aがあれば価値があるかもしれませんが、衛星を12個捕捉できると云っても実際に同時に12個捕捉することはまれで最低限保証されているのは6個です。Z3816Aのように8個捕捉できれば十分であってアドバンテージにはならず、Z3816Aでは10MHzにしても複数の出力を最初から用意され使い勝手が良くなっていますし、オーブンがZ3816Aと同じMTIであるならば何も中途半端なZ3805Aを使うこともないわけです。GPS CONをリリースしている有名なサイトではZ3801AとZ3816Aのどちらが良い?という議論はあってもZ3805Aは登場することはあまりないようです。素人オーディオは運良くこの両方を試すことができましたが、実際に運用してみて、かの有名なサイトで議論されている内容にまったく同意するものだと思った次第でございます。

高精度なクロックを得るならばGPSルビジウムかというところですが、これも試してみてわかったことですが、実際にはルビジウムでは12桁のカウンターで変動が見えない程度の安定度を確保するのは無理です。恐らく全温度範囲で保証しているのは10桁程度ではないかと思います。ルビジウムの発熱をうまく利用すればオーブンの役割を持たせることができるので実際には11桁近い精度を得ることも可能かとは思いますが、よくできたGPSの精度にくらべればたいしたことはないと思う次第でございます。たとえばGPSを2台動作させ両方の出力のレシオを取ると、ずっとカウンターを眺めていても12桁が変動しないかあるいは±1カウント程度に収まっているのが現実でございます。もちろんどなGPSでもこうなるか?ということに関しては恐らくそれは否だとは思いますし、当然ながらGPSのクセを理解したセッティングなどが必要ですが、多数の基地局で時刻同期を取ったり搬送波周波数をぴったり一致させるための装置であるわけですから、フィールドより条件の甘い実験的な動作環境においては本来このような結果にならないとおかしい訳でございます。

かといってルビジウムがまったくいらないかと申しますとこれも実際にはそうではないと思います。いちいちGPSアンテナを引いてこないと同期が取れないというのでは困る場合もあるでしょうし、アマチュア的にはルビジウムの精度で十分であるはずですから。強いていうなら、自作派のマニアにとっては10MHzはオーディオ用の44.1Kの整数倍でも何でもないわけであって、その点、DDSを内蔵し任意の周波数を発生できるルビジウムなどはありがたい存在であることに違いはありません。
最近は2006年頃に生産されたルビジウムなども中国経由で手にはいるようで中国の経済発展たるやものすごいものを感じます。物珍しさに注文してみても良いのですが(恐らく10個注文すれば半額くらいにしてくれるでしょうね)素人オーディオとしては中身が大幅に変わっているとも思えないのでやめておくことにしましょう。世の常は「なるべく安く作る」ことなのでスペック的には良いかもしれませんが、見えない部分を含めてすべてにおいて優れているとは限らないでしょう。まあそれはZ3801AとZ3816Aの関係に良く似ているのかもしれませんね。あるいは、特段の興味を寄せていれば、解剖してどうなっているとか、位相雑音がどうとかやるかもしれませんが、位相雑音を測定するためには80万とか100万くらいの投資が必要なので「だから何なの」というむなしさに襲われることが恐ろしく、素人オーディオとしても着手するに至らないのでございます。

それから位相雑音ということに関してはどこぞの資料に記載がありましたが、74ACなどのC-MOSのゲートはさして悪くはないようでした。ゲートの数が増えれば単純に加算されるという訳でもなさそうですし、そこそこの純度をもって分周などをすることも可能ではないでしょうか。74ACが悪くないということは、波形は汚くとも高速なゲートを使う方が位相雑音に関しては有利だと云うことかもしれません。クロックを分周すれば100ps程度の分解能しかない安いアナライザでもジッタが少ないか多いかくらいの確認することくらいはできるでしょうから、100万円のうち98万円くらいは救われるかもしれません(笑)。

追記1
個人でも貸してくれるというなら1か月くらいスペアナを借りてもいいのでしょうが...それでもレンタル料金は30万円近いです。中古のスペアナが1台買えてしましますね。