LH0032とGOA


いろんなロットやメーカのLH0032 CGじゃなくてGとか、おててつないだCALOGICなんかもあります!


これは私の邪推ですが、カスコードカレントミラー(GOA)シリーズは、LH0032からヒントを得たものではないかと...GOAの回路はLH0032(単純化した等価回路)にそっくりです。
抵抗負荷差動アンプが主流だったころ、モーターサーボアンプか何かにLH0032が登場しましたが、そのときのコメントは、確か、カスコードカレントミラーはIC回路の標準だ!スルーレートが500V/μSという超高速特性だ!とかなんとか...それからしばらくしてGOAシリーズが始まったと記憶しています。電池式GOAパワーアンプは当時のファンなら誰でも1台は作ったことのある名作ですが、基本回路はまさにLH0032ですねえ。

一方、GOAプリアンプが主流の頃はLPレコードがオーディオの中心で、CDはもちろんありましたが、ぼつぼつと1ビット変換方式が出始めた頃で、まだまだ完成の域には達してはいなかったはずです。デノンのDL103などMCカートリッジを相手にする場合、高速特性より低雑音の方が重要で、また、高域でゲインが低下するEQ回路では高速特性を殺して使うしかありません。ですので超高速のプリアンプやLH0032自体の出る幕はなかったと思います。

以来、15年とか20年が経過し、世の中はCDやSACDが大半を占め、あまり雑音を気にしなくていいフラットアンプが主流になりました。CDやSACDの場合には、高速なアンプほどいい音がする!という思い込みがあり、親交のあった録音エンジニアの方も同じようにコメントしておられましたので、いつかLH0032のアンプを作ってみたいと思っていました。そのコンセプトにのっとって製作したのがSACD用フラットアンプです。

高々ICと思っていたらかなりイケる音がしてびっくりでした。SACDを聞く限りにおいてですが、ディスクリート(指定部品にて作成)で作った完全対称アンプや、高名なモノリシックのオペアンプなどと比較して、繊細さや透明感において数段優れているようです。SACDの高域がすっと抜ける感じがとても良く表現されるのがLH0032です。複雑な波形を綺麗に通す超?高速アンプのなせる技でしょうか?もちろん中身がディスクリート構成(ハイブリッドICですからね)であることも有利に働いているでしょう。

LH0032でかなり満足できる音が出てしまうと、プリアンプに関しては、ディスクリートで組む気力が薄れてしまいます。過去のGOAプリアンプについても、エミッタホロワが追加された回路はあまり一般的でなかったですし、パワーアンプとDC直結で使うにはICの方がドリフトの点で有利になるからです。LH0032はポジスターオーブン(LM399だぁ!)みたいなものなんで、初段の漏れ電流は多くなりますが、そのかわり、オーブンでだいたい同じ温度に熱されているため、ウオームアップしてからのドリフトは比較的小さいです。

ということで、プリアンプは元祖GOA回路のLH0032自体を使い、パワーアンプには電力増幅用の素子を使ったLH0032型回路でいきたいなというのが言いたいことかしらん??