PLLとVCXOを使って周波数を逓倍させると

原発の周波数安定度をなるべく損なわずに周波数を逓倍するにはPLLとVCXOを使う方法が定番?でしょうか。つまりはロックレンジのめちゃくちゃ広いVCOなどではお話にならずロックレンジの狭いVCXOを使うということです。もちろんロックレンジを狭くするとVCXOの中心周波数の精度が要求されるようになるので一般的には50ppmが限界のようです。

以下、代表例として適切かどうかはわかりませんが、PLL+VCXOの基板キットとして販売されているものを使って実験してみました。使われているVCXOは三田電波のMXO-57Bの30MHzです。PLL ICはTI TLC2933Aですが某社のジェネレーターにも使われているものですし悪くはないでしょう。10MHzのリファレンスはZ3801Aですからこれも悪くはないです。

安定な10MHzを供給してPLL+VCXOで30MHzを作ったことになりますが、もちろん22.5792MHzや24.576MHzのVCXOを使えばそれぞれの周波数を作ることもできます。恐らく某E社さんでも同様の方式を使っているはずです。



結果、周波数を逓倍するとアラン分散は原発より1桁程度悪化していることが見てとれます。PN(位相ノイズ)は公開していませんが1KHzから急激に悪化し1Hzでは-70dbがやっとのようでした。恐らくVCXOの特性によるもので低オフセット側のPNが悪いのは致し方ないでしょう。ですがこの特性は他の製品と比べて悪いという訳ではありません。

tau=1secまでの振動はループフィルタのせいでしょうか(定数はデフォルトのまま変更していない)?しかしながらこの部分を素直な特性にできたとしても現状では原発の純度を保つのは難しいということが伺えます。ADEVに関しては恐らくはロックレンジがもっと狭いVCXOを使うことである程度は改善はできると思いますが前述の通り極端に狭くすることはできないはずです。

ということでしたが、なんだかんだ云ってもFEに載っている50MHzのVCXOは馬鹿にしたものではないということもわかってきました。しょぼいVCXOなのかとも思っていましたが実はそうでもないみたいです(もちろん問題点がない訳ではないですが)。