PN/ADEV測定装置

PN(Phasse Noise)とADEV(Allan Deviation)を測定するマシンとして有名なのはSymmetricomのTSC5110A/15A/5120A/5125Aですが、10A/15Aはスタンダード20Aは1-30MHZで超低のノイズフロア25Aは1-400MHZの広範囲測定という感じの内容です。日本では丸文さんで扱っている商品で数百万のお値段がついているはずです。25Aは高級なA/Dコンバーターを使っているでしょうから恐らくもっと高価なのかもしれません。

ADEVなどはカウンターではtauを変えながら測定するのは手動では困難ですし、仮にフリーのソフトでGP-IB経由でコントロールするようなものがあったとしても測定限界は低いと思います。もし5120Aと同様の性能をリーズナブルなお値段で実現できるマシンがあればそれは夢のようなもので(笑)是非ほしいということになりますが...最近リリースされたようです。



出典:TimePod 5330A Manual


TimePod5330Aというマシンですが型番は51xx系を意識しているように見えます。実体はよくあるUBSコントロールボックス(スペアナ)でデーター処理をWINDOWS側で行うようになっています。51xxのようにディスプレイはありません。動作原理は詳しく書かかれていないのでよくわかりませんが恐らく51xxと同様ではないかと思います。ADEVの測定限界は5120Aでは3.0E-15でTimePodは1E-13以下ということですが、5120Aに関してはどんなリファレンスを使ってどれだけの測定時間をかけたらそういう値になるのか不明です。

いくつかの周波数標準を測定した結果を見る限りにおいてはLPROもPRS-10もルビジウムの割には大して良くない部類であることがわかります(ルビジウムはそんなもんだと云ってしまえばそうですが...)PRS-10はtau=1-10secではLPRO以下の特性です。にもかかわらずなぜか0.01-0.1secの間は比較的優秀なようですが。残念ながらDDS搭載版と云われているFEの特性はグラフにはないですがtau=1secではLPROの倍くらい良いのは確実です。5.0x10E-12程度の性能は出ているでしょう。


さてこちらは(完璧とは云えませんが)皆様お待ちかねのFE5680Aの測定結果です。FE5680AをRef.A/Bを使って測定して最後にRef.AをRef.Bを使って測定しています。tau 0.01sec-10secの間は大幅に違ってはいない値ではないかと思います。前述の通りtau=1secでは5.0x10E-12程度の性能が出ていることは実証できていると思います。何故0.1sec以下で性能があまり思わしくないかと申し上げれば 1)DDSのリファレンス(約50MHz)であるVCXOの性能があまり良くないこと(※確かにいい加減なVCXOなんですがさほど特性を悪化させてはいないようです。従ってFEのルビジウム原子時計そのものの信号品質の問題でもあるようです。) 2)DDSチップが古いため低オフセット側のSSBノイズが若干多いこと(※若干影響している程度)に起因するのかもしれません。FE5680Aの場合はVCXOにロックしている周波数の高いリファレンスを取り出して外付けの高精度DDSを使えばVCXOの悪さやチップの悪さはかなりの部分改善されるはずではあると思われます(※しかしルビジウム原子時計そのものの問題もあり大幅な改善になるかどうかは微妙)。

いかにルビジウムであってもWenzelとかBVAといった高性能なOCXOには及ばないということですね。これらはPN/ADEV測定のリファレンスとして使われているもので当然と云えば当然ですが、ただしこのクラスでない限りはADEVに関しては原子時計の方が良い結果になることが多いです。予測に反して低オフセット側のPNは原子時計にロックしていると悪化すると云われておりZ3801Aに搭載されている有名なHP DUAL OVENであってもGPSにロックした状態では0.1Hzオフセットで"-70db"が限界と云われております。これ以上を測定したければ低オフセット領域のPNがずば抜けて優れている(かつフリーランでもADEVが小さく押さえられている)OCXOでやるしかないようでWenzelとかBVAの登場ということになります。ただOCXOは長期安定度や周波数再現性があまり良くないのでその点においてはセシウムにはかなわないようです。

ちなみにHP DUAL OVEN(10811)のPNを測定してみましたが10Hz OFFSETで-130db以上はありましたが、1Hzでは-105db程度だったと思います。0.1Hzになると本当なのかどうかのかわかりませんが-70db前後の値になります。リファレンスに使っているのは実際には10811より性能が良いと思われるOCXOを積んでいるGPSDOです。HP DUAL OVENをサブに回すくらいですからOCXOの性能はすばらしいのでしょうねきっと。ただしGPSにロックしている限り0.1Hzでは-70dbが限界なので10811の0.1Hzオフセットがまともに測定できているかどうかはわかりません。ちなみにHP DUAL OVENのADEVはtau=0.1秒を超えたくらいから悪化し始めtau数秒でFE5680Aと逆転します。なのでHP DUAL OVENを使ってtau=数秒以上でFE5680AのADEVをまともに測定することは困難です。経験的にはZ3801Aの運用状況によってはtau=1secでもADEVの値がばらついてしまうこともあったと思います。

優秀なOCXOを使ったらHP10811のPNをまともに測定できるというお話でしたが、オマケとして、100MHZのOCXOを使ってDDSで10MHzを発生させたらどうなるかやってみました。100MHzの場合はDDS側で逓倍する必要がないのは良いのですがPNを測定してみると100Hzから低オフセット側が急激に悪化しているようで実際にはあまりメリットを感じられませんでした。ADEVは思った通り右肩上りになっていてtau=1secでは6.95x10EからFEの1000倍以上の値です。ADEVに関しては一般的なOCXOはルビジウムには到底かなわないことが理解できます。