DCD-8を評価してみました

素人オーディオのワードクロックフリークぶりも度を過ぎているかもしれませんが今回はDCD-8の性能に迫ってみました。

外観からしても高度な機能を持つようなイメージがあるDCD-8ですがお値段はOCXに比べてかなり高いという設定ではなく個人スタジオなどをターゲットに想定し売値で「20万円」を意識していると思います。

DCD-8 正規品です 10MHzのルビジウムにロックした様子です


筐体は1Uのラックマウントで電源はスイッチングのACアダプタを外付けするようになっています。電源がACアダプタで内蔵されていないことは解説記事のどこにも書いてないことで素人オーディオも実機を見て初めて知ったことです。DCコネクタはかなりレトロチックなDINだかBTSだかの4Pのようです。

安く作るためにACアダプタが選択されているとは思われますが、代わりにどうしようもないスイッチング電源を内蔵していただくよりは良いかもしれません(ですが電源を別に用意すれば実質価格アップにつながること避けられないです)。素人オーディオはACアダプタはノイズをまき散らすので使わない主義です。仕方なく良質な安定化電源を使っておりますが、コネクタ買ってきて配線するのだってドのつく素人さんでは大変でしょうに。見ればどのコネクタなのかわかる人にとっては問題ないでしょうが。

それから本機の動作中にDCプラグを引っこ抜いたりするとファームが飛ぶことがあるので要注意だそうです。DC安定化電源だっていきなりリレーで負荷を切断しますが特に問題はないようでした。

以下のテストは素人オーディオが用意した定価7万円近い安定化電源+アクロリンク7N銅電源ケーブルを使って行っております。これだけでも大分明るい音になるのでテスト条件は悪くはないです。


さて、まずは内蔵発振器を使って44.1KHZの周波数安定度を測定してみましたが水晶発器としては悪くはないようです。周波数精度は1-2ppm程度なので特に良いとは云えないですが。

次に10MHzのルビジウムリファレンスを使ってみましたが写真の通り外付けのFEに問題なくロックします。
周波数精度は一気にアップしますが、44.1KHzに関しては周波数安定度(アラン分散)はまったく向上しません。内蔵の水晶発振器を使った場合とまったく同じと云っていいと思います。この現象はDSPなどを使ってワードクロックを生成する方式に見られる場合があるようです。安定度の高いPLLやDDSを使った方式ではこのようなことは起こりにくいと予測されます。内部の残留ジッターが支配的になりルビジウムなどの極めてジッターの小さい信号を生かすことができないということなのかと推察致します。

内蔵発振器はオーブン無しのオシレーターであることは確認していますが、原発の周波数を高めに設定してあるようで、安定度を稼げるようにはなっています。しかしながらそれにしてもルビジウムの周波数安定度は内蔵発振器の100-200倍は良いはずなのに周波数安定度に関してはルビジウムを使った効果がまったくないと云うに等しいと思います。単に平均値としての周波数精度が良くなるだけです。

調べてみますと32KHzに設定するととアラン分散はそこそこ小さくなりますが44.1KHZでは32KHZの3倍くらいの値に悪化します。176.4KHZではさらに4倍くらい悪化するので内部で176.4KHZを作って分周していることが推定できます。32KHzと44.1KHzは別系統でしょう。


聴感について素人オーディオのシステムで44.1KHZを使ってルビジウムありなしで比べてみましたが、予測の通り、差がわかりにくいと云ってよいと思います。ルビジウムのありなしがまったく区別できないという訳ではないですが、かなり似ているのでブラインドテストにおいて高い確率でどちらであるかを言い当てる自信は持てません。

ですがDCD-8は国内品のジェネレーターとは趣の異なる感じではあります。そこそこバランスのとれた乾いた感じの心地良い質感を出していることは確かにそうではないかと思います。PAや劇場などに向いている音といいましょうか。


DCD-8が教えてくれたのは、周波数安定度が同じであれば、原発ルビジウムでも水晶でもだいたい同じ傾向の音になるということです。言い換えれば周波数安定度が良くならない限りはくっきりはっきりとした質感を醸し出すことは難しいということでしょうか。素人オーディオはこの実験から周波数安定度は重要なファクターの1つであることを再認識したのでございます。


※DCD-8の設計者はおそらく上記のことは十分理解しているものと思われます。その上で製品として支障はないと判断しているのでしょう。ルビジウムを使ったときに聴感などを良くするという目的ではなく、複雑なクロック環境においてシステムを適切に管理すること、あるいは、明らかに周波数安定度の悪い機器に関しては問題のないレベルになるようにリクロックしてあげること等が本機の目的と云えるのでしょう。ホームオーディオ用としては物足りない商品であったとしても業務用としては利用価値のある商品であろうことを最後にお申し添えます。業務用であればルビジウムの効果があろうがなかろうがたいした問題はないでしょうし。

なお、本機(テストに使った実機)は正規ルートで入手した新品でありファームウエアもおそらく現時点における最新版であるはずです。測定には安定度の高いGPSリファレンス信号とAgilentの最新鋭のユニバーサルカウンターを使っております。

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余談ですが本機は某オーディオショップでも取り扱っているようですがWEBのキャッチコピーには「超低ジッター」などの文言はなかったように思われます。それがどうしてなのかとても気になっていたいのですが、何故、ジッターキラーなのに超低ジッターではないのか?しかしながら今回の実験を通じその意味がわかりました。そちらの方!さすがに読みが深いようですね。敬服致します。

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