G03X 再挑戦

以前テストした限りではG03XとDR1の内蔵クロックは簡単に識別できる程の差がなかったように思いますが、G03Xのファンの方がおっしゃるにはAntelopeよりは良いしエソのCDPに使えば効果が大きいということでした。ということでG03Xを4,5日お借りして72時間以上電源を入れっぱなしにしてから試聴してみました。

結果としては内蔵クロックからG03Xに切り替えると若干の違いがわかる程度ではありますが、必ずしも良い方向への変化とは云えないように感じられました。G03Xにすると内蔵クロックのもやっとした感じが取れはしますが、その代わりに中高音が持ち上がって不自然な広がり感がつきまとい透明さが失われたように感じます。CDP内蔵のオリジナルクロックは若干もやっとしていますが背景が透明で距離感もありうまくまとまった感じではあります。

ということでG03Xは若干癖があるようで、かつ改善の度合いとしてはルビジウムクロックには遠く及ばないというふうに感じられます。素人オーディオはエソのCDPは使っていませんので相性が悪いのかもしれませんが、G03Xか内蔵クロックどちらかと云えば内蔵クロックを使って聞くことが多いだろうと思います。

テストのあと、いつも使っているルビジウムワードクロックに切り替えたところまったくの別世界です。透明さを失わず分解能が向上し情報量が多く芳醇な音です。

やはりルビジウムワードクロックでないと意味がないと思います。

皆様がお知りになりたいのはG03Xにルビジウムをつないだらどうなるかなんでしょうけれど...面倒でしたが実験しました。LPROがダメなのはわかっているので仕方なくFEを繋ぎました。LPROはオーディオには向かないルビジウムだと思っていますので素人オーディオでは採用することはないでしょう。

蛇足ですがLPRO(DATUM) を久々に聴いてみましたが主旋律ばかりが目立って聞こえてくるような感じがしてなりません。広がり感とか奥行き感についてはG03Xの内蔵クロックに比べてむしろ悪化ではないでしょうか。G03XのユーザーにはLPROを使うなら内蔵クロックの方がむしろ良いという意見をお持ちの方もおられるようです。

注目の結果ですが...ルビジウムの音になったことはわかりますが内部クロックを使ったときの癖が残っているように感じます。内蔵のTCXOよりはずっと良いですが分解能や透明感の向上がイマイチではないかと。察するにG03Xの場合はジェネレーターの回路のどこか一部分あるいは全体に癖を生じさせる何かがあるのかもしれません。あるいは後述の通りジッターレベルがかえって悪化するためにルビジウムの効果が十分発揮されないということもございましょう。

ルビジウムの10MHzを外部から入力するとかえってジッターが増える不思議な現象については、今回も確認されています。
内蔵しているTCXOを使った場合では44.1KHzの出力の標準偏差は約0.7μHzですが(10MHz換算160μHz)ルビジウムを使うと同じ44.1KHzで標準偏差はTCXOの40倍くらいまで悪化します。ルビジウム標準偏差は10MHzで50〜60μHz前後の値ですから明らかにTCXOより優れているはずなのですが。

聴感ではそれなりの効果があったはずなのですがジッターレベルが逆に悪化していたということは驚きです。人間の耳は一体何を聞いているのかわからなくなってきますね。ジッターが増えてもルビジウムの効果を感じることができるというのであれば原信号の位相雑音特性の変化を感じているということなのでしょう。残念ながらこのG03Xは借り物なのでフタをあけてTCXOの位相雑音特性まで勝手に測定することはできませんが...

聞こえ方の話に戻りますが、ルビジウムを使うと明るくやや派手な感じになるのでこれだけを聞いていれば決して悪いという印象ではないと思います。ソースによっては楽しめる音なのかもしれません...伸びやかさと音楽の表現力が足りないという気はしますが...

周波数確度については +0.04ppm でしたから三田電波のTCXOがいかに優秀であるかということではないでしょうか。TCXOとしては周波数確度および標準偏差は十分満足すべき値でしょう。測定器に使えるくらい優秀と云っても過言ではないでしょう。


ちなみに機器内部を覗いてみますと...表示部分を除くと中身はこれだけです。電源部は間違いなく3端子レギュレーターで出力側にはSANYOの低圧大容量電解コンデンサです。基板は紙エポで安っぽい感じがしますが民生用オーディオ機器では大抵は紙エポです。(よく調べてみたらガラエポでした)回路規模からすれば基板は巨大ですがBNCを直接基板に取り付けているため横長にせざるをえないからでしょう(撮影したのは2009年です)。



クロックドライバー部分のクローズアップです。SANYO製の低圧大容量電解コンデンサが鎮座していますが基板には未実装が目立ちオーディオ的に良いとされる有機系の電解コンデンサなどが使用されている形跡はないようです。


G03Xはずいぶんとコストセイブされているようです。PLL回路の部分には面実装の有機系低ESR電解が使用されていますがそれ以外の部分は三洋の低圧大容量電解コンデンサで埋め尽くされています。

ファンの多いG03Xですが素人オーディオにはやはりその良さが理解できませんでした。ただルビジウムを使ったときの効果は予想以上に大きかったような気は致します(ジッターが大幅増大するにもかかわらず)。
しかしながら外部のルビジウムを使った場合G0Rbが比較的無色だったのに比べてG03Xは脚色が強いようにも思えます。G0Rbの場合は内蔵しているルビジウムの癖が強くG03Xの場合はTTL変換回路,PLL回路,ドライバー回路の何れかもしくはすべてにより癖が生じているのではないかと推察致します。

ジッターがどの部分で発生しているかについて調査してみましたが、出力する周波数によってジッターのレベルが変化し、単純な分周で出力できる100KHzについては他の周波数より明らかにジッターが少なかったため、整数倍でないクロックを発生させるPLL回路に問題がありそうであることが推察できます。

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