マスタークロックにおける電源の質

最近考えていることがあるのですが、それはマスタークロックに要求される電源の質について...です。

たとえばですが、10MHzのルビジウムの正弦波を外部からをPLL内蔵のクロックジェネレーターに供給するとしましょう、そのときに10MHzのルビジウムの電源の質などがどれだけ問われるかということなのです。
もちろん原発クロックのジッタは目的の周波数を出力した際のジッタに反映される可能性が高いですが、電源の質はどこまで関係あるのでしょうか。

とりあえず「ルビジウムの定常負荷電流は一定である」という前提で、スイッチング電源とトランス式アナログ電源を比較してみることにしましょうか。

安物電源の代表はスイッチング電源ですが、概ね負荷が一定かつ軽負荷であれば電源電圧はそうそう変動するものではないでしょうしスパイク状のノイズも極端に多いとは云えません。
最近のスイッチング電源は動作周波数が上がっていますから高い周波数で低いESRをもつコンデンサが必要になるでしょうがそういう目的にぴったりのものはいくらでも手にはいりそうです。

それに対していまや高級と称されているアナログドロッパ電源はどうかと云えば、実は、整流ダイオードやツェナーダイオードのノイズやトランジスタの発振など、それなりにノイズが乗っているものであると認識しています。しかしながらスパイク状のノイズはスイッチング電源に比べれば少ないのは事実でしょう。

問題はスイッチング電源のスパイク状のノイズのレベルとそれががどう影響するかということなのですが...きちんと調べているわけでありませんが、スパイクノイズと云っても10MHzよりはおそらくずっと低い周波数でしょうし、ジッタレベルに大きく影響する程の振幅で重畳しているとは考えにくいと思います。低ESRのコンデンサでかなり吸収できるはずですし。

付け加えるならばですがDDSを内蔵しているFEなどのルビジウムの出力波形はDDSを内蔵していないDATUMなどにくらべるとスプリアスが多く信号純度自体が悪いということになりますが、だからといってジッターが多いかというとそうではありません。

スイッチング電源を大型トロイダルトランスを使ったアナログ電源交換すれば、なにがしかの変化はあるでしょうけれど、それは主に電源の質が良くなったことによる効果ではないのかもしれません。たとえば放射されるノイズが減ったとか、アナログ機器の電源に回り込むノイズが減ったとか、そういう二次的な効果の方が大きいような気もします。

素人オーディオが思うに、正弦波を矩形波に変換するときのゆらぎ(ジッター)がクロックの純度に最も影響する因子で、電源を良くすることに超したことはないのですが、電源のジッタに与える影響はそれほど大きいという訳ではなさそうであるということです。負荷がほぼ一定で電圧変動が十分に小さいということが条件にはなりますが。

某クロックジェネレーターの例では、TTL変換後の波形の立ち上がりが遅いので当然ながらジッターは増加する傾向にありましたが、そのようなジェネレーターによさげな電源を用意したところで果たして意味があるのかどうかも疑問です。

じゃあ素人オーディオが製作したらどうなるんだみたいな例をお示ししますが、こちらで製作した高速TTL変換の波形です。入力はルビジウムの正弦波です。

オシロの帯域が1.5GHzなので0.25nSくらい加算されているはずです(なので本当は1nSちょっとくらいなのでしょう)。某エソの場合11.5nSでしたが10倍近く高速です。オシロを買った当初は1nSとかの立ち上がりを追求すると思っていませんでしたが、こうなるともっと帯域の広いオシロが欲しくなってきました。


なおルビジウムによっては内部にDC-DCコンバーターを積んでいるものもあり、そういうものに対して高級なアナログ電源を用意してもあまり意味がないかもしれませんね。整流しっぱなしの電源でいけるということはあるかもしれませんが...

それから、プライトロンでもタムラ(今売ってないかもしれませんね)でもいいですけれど、高級なトロイダルトランスを使って電源を作るのなら、元のACの質も考慮すべきではないかと思います。プリアンプに使える程の良質な電源を得るなら家庭用のAC100V(電灯線)そのままではおそらく不十分です。ちなみに当方では柱上トランスから一般家庭では考えられない太い電線を使って直結状態でAC100Vを引いてきており、配電盤もまったく別にしていますが、やはり専用に用意した電源(詳しくは説明できませんが)には全然かないません。ノイズを気にする用途には当方では電灯線はまったく使っていないのが実情です。

あるいは電源がどうのと云うならバッテリーでルビジウムを動かしたらどうなのかやってみるのもおもしろいでしょう(24Vバッテリー直なんてやれば簡単にできますからそのうちやってみることにしましょう)。
純直流で半導体を使ったレギュレーターを何も使わなければノイズは極小なのはずです。あるいは鉛バッテリーをフロート使用でつないでおくのもいいかもしれません。電池のことも勉強しなければいけませんが(火事になるとやばいので)どうせやるなら大容量のバッテリーを何個のパラってこれでもかみたいな意欲のある作品を作ってみたいです。