特性の似たFET OP-AMPの比較(AD845, THS4601, OPA627)

中華4495SEQを使ったOP-AMP質感評価の続きとしてAD845とTH4601を新たにテストしてみました。
THS4601はOPA627やTHS4631の関連製品としてTIのサイトに記載があったので取り寄せてただけなのですが。

素人オーディオが試したいと思っていたもののひとつは初段がN-Channel FETのOP-AMPです。唯一?かどうかはわかりませんがAD845は独自プロセスで初段をN-CHで作っているということだったので試してみました。

AD845矩形波応答特性 G=+2 RF/RG/RL=1kΩ ±15V

さすがにOPA627よりは若干高速でオーバーアンダーも少ないです。癖はあるようですがそこそこ綺麗に調整されていると思います。

しかしながら音を聞いてみると雑味が多く分解能もイマイチで全体的な印象はあまりよくなかたです。初段をN-Channelで作ると音楽性が高くなるとか独特の質感があるとかそういうことは特にないようです。あるとすれば実音的な感じで5WAYホーンシステムなど元々分解能の高いシステムでは音が遠くならないと云う点で向いているかもしれません。

次にTHS4601ですがDC付近のオープンループゲインはTHS4631より20db近く大きく広帯域なBI-FET(DIFETではないんでしょうね)OP-AMPアンプとしては特異な存在かもしれません。ノイズ特性はOPA627とほぼ同等でラインレベル(一般に1V RMS程度のことを云うのでしょうか)であれば何ら問題ないと思われます。

THS4601矩形波応答特性 G=+2 RF/RG/RL=1kΩ ±15V

例によって特性をG+2(ただし1MHz矩形波, tr=1nS)で評価してしてみましたが規格(tr=7nS typ)よりずっと低速ということがわかりました。チップは正規ディーラーから購入していますがあまりにも規格値より遅かったので本当なの?ってことでEVA BOARDを発注しておきました(1週間くらいで届くと思います)。なおS/Rは21倍すれば実際の値になるのですが約63V/μSというところでしょうか。波形はオーバーシュートとリンギングが乗っていますが帯域を制限するとOPA627に近い特性になると思われます。

音的にはどうなのかと云うと...これが意外に良かったです。LME49990のどろどろまったりをなくし鮮度を良くした感じです。
透明感がありハイレゾ音源の輪郭の良さを綺麗に表現できていると思います。音数も多いし分解能も高いです。Liveモノなど聞けばはっきりわかります。これだけの質感はディスクリートでも簡単には出せないかもしれませんしもちろん値段の高いOPA627をあえて買う必要はないと思います。OPA627の質感が好きな場合はこの限りではないかもしれませんが...素人オーディオは元々OPA627はさほど好きではないのでどうしてもDIPが欲しいとき以外は使わないでしょうね。もちろん自分で基板を設計するならDIPなんてやらないです(笑)。

OPA627AP矩形波応答特性 G=+2 RF/RG/RL=1kΩ ±15V

LME49990はTr入力にしてはかなり良いと思っていましたがどちらを使うかと聞かれれば素人オーディオはTHSでしょうと答えると思います。LME49990を使っておられる方にもお勧めしたいところです。THSはさらに透明感が高く立体的な音です。

このOP-AMPは云う程に高速でもなんでもなく比較的安定で適当にソケットに乗せても発振などもしていません。OPA627よりは留意点は多いにせよ問題なく使える可能性が高いです。ただしソケットに乗せるよりはSOP用のパターンを設計する方が良いと思われます。LME49990とTHS4601を差し替えて比較するなどもできると思いますし実装屋さんに依頼するのであればPowerPad付きのDDAが使う方が良いでしょう。消費電流がLME49990よりちょっと多いのでやはり熱くなります。

蛇足ですがTH4631は4601よりもずっと高速です。当然ソケット変換あるいは上乗はよろしくないです。きちんとパターンを設計して応答をオシロでチェックしながら調整するのが筋です。何もしなければとてつもないオーバーやアンダーあるいは発振に悩まされる可能性大です
発振を覚悟して音を聞いてみましたが全体的に硬くつまらない音ではありました。発振していれば必要以上に電流を喰うでしょうしDCオフセットが乗ることなどもありまともな評価にならないこと請け合いです。

中華DACにTHS4601を使用して96/24 10KHz -3dbを再生した際のスペクトルです(RL=1k正確には1050Ω)。なお10KHz再生時の3rd HDを測定するとOP-AMPの種類にはおおよそ関係なく一定になります(だいたい0.04%くらいです)。なので差動合成がうまくいっていない可能性がありそうですが中華DACなんでそんなもんだとは思います。がさすがにクロックノイズダダ漏れとかそういうひどい状況ではないです。

ちなみにフィルタ設定はSLOW ROLLです。最初はSUPER SLOWで聴いていましたがOP-AMPをいじりながら聴いていくとSLOW ROLLがまっとうな特性あるいは質感であることがわかってきました。

これはフィルタをSUPER SLOWに設定して10KHzの正弦波を再生したものですがまるでDDSで正弦波を出力しているような波形です。パルスは綺麗に通るようになるのかもしれませんが正弦波は歪んでしまうことになります。なお中華DACのフィルタ回路は恐らくAKのデーターブックに準じて作られているので甘すぎるということはありません。もちろんSUPER SLOWの方が質感が高い可能性もありますが空間のゴミが多く見通しが悪くなってしまうようです。

フィルタをSLOW ROLLに変更すると(アベレージをとってますが)この通り正弦波は綺麗になります。質感もSUPER SLOWに比べると改善しています。輪郭がくっきりして自然な感じです。